基礎知識

【知っておきたい社会保険の男女差】シングルファザーは経済的に困窮する!?

LINEで送る
Pocket

single

はじめに

前回の記事で、会社員のパパが亡くなった場合の国からもらえる保障「遺族年金」についてお伝えしました。

パパの死亡時に国からもらえるお金 http://hokenqing.com/nenkin4/

パパが厚生年金に加入していらっしゃる場合や小さなお子さんがいらっしゃる場合は、結構な額の国の保障が得られることをご理解いただけたかと思います。日本の社会保険制度において、子どもと会社員の妻は相対的にかなり手厚い保障を受けることができます。なぜかというと、それが社会的に合理的でありかつニーズにあった国のお金の使い方だったからです。

日本の経済成長期は地方から働き手である若者たちが都心に移り、大企業中心に就職し定年まで働くことが当たり前でした。彼らは終身雇用があるからこそ安心して結婚し、郊外に家を持ち専業主婦が子どもを育てるという生活設計ができました。政治はマジョリティの意向にどうしても向いてしまうものですから、会社員の妻は第三号被保険者として社会保険料の支払いは免除され、万が一のときに手厚い保障を得ることができたのです。会社員でいることで担保される部分が大きかったのですね。

しかしやがて時代の変化に国の制度が追いつかなくなります。

小さなお子さんを抱え配偶者に先立たれた方に支給される遺族基礎年金は、2014年4月に「やっと」夫も受給対象となりました。つまり、それまで遺族基礎年金は妻しか受給できなかったのです。世の中は未亡人の生活困窮については問題視しますが、社会保障制度の男女差によって妻に先立たれたシングルファザーの方が、実は生活が困窮してしまうケースもあるのです。

遺族基礎年金は対象となる子どもが一人の場合、年間約100万円支給されます。このお金だけで遺族の生活費がすべて賄うことはできませんが、奥さんが亡くなった後、保育園の送り迎えも一人でこなし、住宅ローンも抱えた若いお父さんにとっては、この100万円が受け取れるかどうかはかなり大きな意味があるかと思います。

転職をしたときも保険の見直しを

会社員の妻であれば、一生涯受け取ることができる遺族厚生年金ですが、会社員として働いていた妻に先立たれた夫には、遺族厚生年金を受け取ることができません。そもそも、厚生年金保険料の負担に男女差はありません。男性が第三号被保険者の妻を扶養していようが、女性が共働きであろうが、給料が同じであれば、負担する保険料は同額です。

しかし、会社員女性が亡くなった場合、遺族厚生年金はまず夫に支払われることがないのです。これは、遺族厚生年金の受給要件として、会社員妻が亡くなった際に夫が55歳以上であることという条件があるからです。しかも、妻死亡時に55歳であっても、遺族厚生年金が受給できるのは60歳からですから実質遺族の暮らしを守るための年金としてはあてにできません。

2014年4月に遺族基礎年金の受給要件に「夫」が加わったことにより、遺族厚生年金の受給要件にも一文変更が加えられました。「夫は遺族基礎年金を受給中に限り、遺族厚生年金も併せて受給できる」と。しかし55歳以上という年齢条件は撤廃されていないため、共働きの会社員妻が亡くなった時55歳以上で、かつ18歳未満の子どもを育てる遺族基礎年金の受給中の夫のみが遺族厚生年金受給対象者となるわけです。55歳といえば、一般的にお子さんはもうかなり大きくなっているはずです。これでは小さなお子さんを抱えた共働き夫婦に万が一のときに支援の手が届きません。

このように、国の保障には男女差があるのです。

また男性であっても職業によって国の保障が異なることも知っておくべきです。例えば、15年会社勤めをした40歳の男性が会社を辞め起業し(第一号被保険者)、直後に亡くなってしまった場合、奥さんは過去男性が15年も納めてきた厚生年金から遺族厚生年金を受給することができません。なぜならば、遺族厚生年金を受給するには、厚生年金加入者であることと老齢厚生年金受給要件を満たすことという二つの大きな条件をクリアする必要があるからです。したがって、起業した男性は前者の条件にも当てはまりませんし、老齢厚生年金受給には25年以上の年金加入期間が必要ですから40歳の男性は後者の条件にも当てはまりません。会社員でいるかどうかで国の保障が大きく変わるのですから、その差額については民間保険で調整する必要があるのです。

私たちはどうしても「保険」というと、民間保険会社の保険商品を比較してどちらが得かという視点になりがちですが、そもそも国の保障が職業や性別で変わるということを知らずないと、万が一の保障が「いくら必要なのか」がわからないことをぜひ認識していただきたいと思います。

 

LINEで送る
Pocket

著者 / Author

山中 ヤマナカ  伸枝 ノブエ   心とお財布を幸せにする専門家

金融機関や企業からの講演依頼の他、マネーコラムの執筆や書籍の執筆も多数。 個人相談も多く手がけ、年金、ライフプラン、資産運用を特に強みとしており、具体的なソリューション提供をモットーとしている。株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役。

⇒ 山中さんのインタビュー記事・ご相談はこちら